
『弱者の兵法 野村流必勝の人材育成論・組織論』 野村克也 (著)
選手時代は戦後初の三冠王となり、捕手として多くの打者を惑わせ、
監督になってから今やあたり前となったデータを活用する「ID野球」を
導入してヤクルトスワローズをリーグ優勝4回、日本一に3度導いた
野村克也氏。
野村監督で有名なのは「ボヤキ」ですが、
選手に対して簡単にほめることはしなかったそうです。
「『ほめる』ということは自分の見識や能力をさらけ出すこと」
「ほめて伸ばす」という指導方針が根付いている現代社会において、
野村監督があえてほめない理由とはどのようなものなのでしょうか。
雑誌のインタビューで以下のように答えられています。
「ホメるってのは怖いことなんだ。どこを評価するのか、
それによって自分の見識や能力をさらけ出すことにつながるから」
自分が評価するポイントと、相手が評価してほしいと求めるポイントが
ずれていると、せっかくほめても相手に受け入れてもらえません。
また、自分の見識や能力がない場合、
ヘタにほめると相手からの信用を失うことになります。
リーダーは他のメンバーよりも多くの知識、経験を身につけ、
見識や能力を高め続ける必要があります。
また、野村監督は以下のようにも述べられています。
「昔は処世術で下の人間が上の人間のご機嫌を取っていたが、
今は上の人間が下の人間のご機嫌を取る時代。物事が逆になっている。
おそらくそれは指導者の延命策の一つだし、自分の野球観や指導力に、
自信や信念がない証拠だと思うんだ。信用、信頼、信念。
『信』がなくなると、ゴマすりに走る。これは人間の心理じゃないですか」
信用、信頼、信念。
これはビジネスにおいて、リーダーに求められることにも通じます。
信用や信頼は、相手とのコミュニケーションを円滑に行うために重要な要素です。
メンバーからの信用、信頼なくしては、指示もきちんと伝わらず、
最高の結果を得るのが難しくなります。
また、信念がぶれていると、メンバーに自信をもって指示することができず、
メンバーも自信をもって仕事をすることができなくなります。
リーダーとして常に向上心を持って能力を高め、
メンバーからの信用、信頼を得ていくこと。
そして、信念を強くして、自信をもって指示すること。
現代の多くのリーダーに欠けている、リーダーシップの要素です。
経済人から学ぶリーダーシップ


『采配』 落合博満 (著)
現役時代は三冠王を3度も獲得し、
中日ドラゴンズで監督として務めた8年間すべてAクラス。
リーグ優勝4回、2007年には53年ぶりとなる日本一にも輝き、
名監督としても歴史に名を刻まれました。
選手にあわせて接し方を変える落合氏
落合監督はマスコミに対してあまり多くを語らず「記者泣かせ」
とも言われていますが、選手に対してもあまり多くを語りません。
2011年にリーグ最多の79試合に登板し、防御率 0.41 という驚異の結果を
残した中継ぎのエース・浅尾投手は入団から4年間ほとんど
話しかけられることがありませんでした。
ある試合でフォアボールによる出塁を許してしまった直後、
「この回は、お前に任せた」
と言葉をかけられ、監督から認められたと感じたそうです。
一方でセ・リーグ最高の二塁手とも評される荒木雅博選手に対しては、
積極的に声を掛けられます。落合監督は荒木選手の評価について、
以下のように述べられています。
「自分を過大評価するやつが多いこの世界で、
自分を過小評価する珍しいやつ」
落合監督は荒木選手に自信を持ってプレーに臨んでもらえるよう、
積極的に声をかけられています。このように落合監督は、相手に合わせて
言葉がけのスタイルをうまくあわせられています。
落合流指導は「指導してはならない」
また、落合監督はコーチ陣に対して以下のルールを徹底するように
求められていました。
「こちらから選手を指導してはならない。
選手が助けを求めてきた時に初めて指導すればいい」
指導することが仕事であるコーチにとって、「指導してはならない」
というのはとても大変なルールです。
しかしその次に続く「選手が助けを求めてきた時に指導する」というのは、
コーチングという点において、基本ともいえるポイントなのです。
コーチとは、もともと「馬車」を意味する “Coach” から来ている言葉です。
「馬車」は馬が勝手に行きたい方向に連れまわすのではなく、
乗る人が望む所に連れて行くのが役目です。
このことから「コーチング」とは「相手が望むところに送り届ける」
という意味に派生して生まれたものです。
つまりコーチが選手を強制的に指導するのではなく、
選手が指導を求めた時に、選手の望む方向へ導くのが役目なのです。
NLPも「相手の心理を操作する」のではなく、
相手が望む状態になるように導くというのが前提としてあります。
誰しも「自分の心を操られたい」とは願っていません。
一方で、信頼している相手の支えが欲しい、尊敬している人から
指導してほしいと願うことはあります。
その際に相手の立場に立って、相手が望む結果を得るために、
導いていくのが指導者の役目です。
リーダーは社員を1から10まで常に指導することではなく、
社員の能力を見極めて信頼し、社員から助言を求められた時になって、
初めて手をさしのべ、導いていくという姿勢を持っておきましょう。
経済人から学ぶリーダーシップ


現在、海外リーグで活躍しているサッカー日本代表の本田圭佑選手。
2010年に南アフリカで開催された「2010 FIFAワールドカップ」において
日本代表を決勝トーナメントに導くフリーキックを決め、
2011年に開催された「AFCアジアカップ2011」では大会最優秀選手に
選ばれたことは記憶に新しいです。
本田選手はサッカーに対する向上心が非常に強く、勝気な性格でもあり、
インタビューなどでとても大きな目標を発言することから、
「ビッグマウス」ととらえられることがあります。
しかし、本田選手は「ビッグマウス」といわれた発言も、
現実のものにしてきました。いわゆる「有言実行」です。
「有言実行」はとても素晴らしい仕組み
「有言実行」はとても素晴らしい仕組みです。
自ら目標を宣言する、公約を発表というのは、
周りの人に対して約束をするというのと同じです。
そして宣言した目標を達成する、公約を守ることで、
周りの人からの賞讃を得ることができます。
その賞讃は目標が高ければ高いほど、大きくなります。
また、目標を宣言するときには、達成する具体的な日時や数値を設定して
あわせて公表すると良いです。
ゴールとなる日時、数値目標が明確になれば、
ゴールから逆算して、今何をすべきか、ということがわかります。
NLPのワークに自分が望むゴールに到達した時のことをイメージする
「チェインプロセス」というワークがあります。
自分が望むゴールをイメージし、現状の位置からゴール地点まで
実際に歩いて疑似体験し、成功のイメージを高めるものです。
成功までの途中の状況もあわせて疑似体験しますので、
より強く、現在の状態からゴールまでのイメージが強くなります。
目標を周りに宣言して、実行し、目標を達成すること。
そのために、自分自身の中での成功イメージを高めて、
実際に行動すること。
高い目標を掲げて「有言実行」ができるリーダーには、
他のメンバーから絶対的な信頼を寄せられます。
経済人から学ぶリーダーシップ


『フットボールサミット第4回 カズはなぜ愛されるのか?』
40歳を優に超えた今でも現役で活躍しているキング・カズこと三浦和良選手。
現役にこだわり、若い選手に交じってプレーしつづける姿だけでなく、
2011年3月に開催されたチャリティー試合でゴールを決めるなど、
ここ一番で大活躍する姿に、日本中が魅了されます。
そんな三浦選手ですが、華々しく活躍する一方、
悲劇のヒーローとしての一面もあります。
1994年のFIFAワールドカップ・アメリカ大会のアジア地区最終予選で
最後の最後でゴールを決められ本選出場を逃した「ドーハの悲劇」。
1998年のフランス大会での代表選考漏れ。
そして幾度もの戦力外通告、と困難な状況になりながらも、
それを乗り越え、現在もプレーし続けています。
批判を誇りに変える
三浦選手の精神力の強さは自分自身だけでなく、
他のプレーヤーにも大きな影響を与えています。
1998年にオリンピックの柔道で2度の金メダルを手にした谷亮子さんが、
プロ野球のイチロー選手と対談した際に、三浦選手から言われた言葉が
紹介されていました。
「成功した時にスポーツ紙の一面になるのは普通の選手。
失敗した時にスポーツ紙の一面になる選手は限られている。
一面で失敗を取り上げられ叩かれることに誇りを持てばいい」
また、サッカー日本代表がワールドカップ・フランス大会で、
3戦全敗となり帰国した際、城彰二選手に対しサポーターが水をかけ、
生卵をぶつけるという騒動がありました。
このことを聞いた三浦選手は、城選手に電話をかけ、こう話したそうです。
「水をかけられたということは
お前がみんなにエースと認められたということなんだぞ。
俺だってブラジルでファンにドラム缶を投げられたんだぜ。
挫けるなよ。お前はまだ先を目指すべき男だよ」
活躍を期待された選手が結果を残せず、マスコミから叩かれたり、
ファンから非難を浴び、どうしても落ち込んでしまいます。
しかし、三浦選手はそのような状況を良い方に捉えるアドバイスを
二人に伝えられています。
NLPにも状況の見方を変えることで意味を変えて捉える、
「リフレーミング」というワークがあります。
一見、悪い状況にとらえられるものに対して、
見る角度や枠組みを変えることで、プラスの意味があることを知ります。
そして、プラスの意味に変えてくみ取り、自分自身の反応や行動を
変えるというものです。
物事の見る角度や枠組みを変えて、プラスの側面を見つける
会社においても失敗してしまったり、うまくいかずに困難な状況に
直面してしまうことがあります。
そのような時に、「失敗を次の成功の糧とすればいい」と考えたり、
「後輩が同じような状況に直面した時に、的確なアドバイスができる」
と考えたりするのです。
物事の見る角度や枠組みを変えて、プラスの側面を見つける。
リフレーミングは常に前進・改善が求められるリーダーにとって、
メンバーを勇気づけることができる能力です。
経済人から学ぶリーダーシップ


『イチロー 262のメッセージ』
日本プロ野球界初のシーズン200本安打達成を始め、
日本での7年連続首位打者、メジャーリーグ歴代最高となる
シーズン262安打の樹立、10年連続シーズン200安打達成など、
数々の記録を打ち立ててきた日本プロ野球界史上最高のバッター・イチロー選手。
イチロー選手のプレーに対するこだわり、研究、徹底ぶりも素晴らしく、
多くの選手が尊敬し、見習っています。
また野球世界一を決める「ワールド・ベースボール・クラシック」において、
第1回は打率.364の大活躍、第2回は不振にあえいだものの決勝の
韓国戦において、延長10回に決勝の2点タイムリーを含む6打数4安打と
日本代表チームを優勝に導く活躍を見せてくれました。
「チームにリーダーはいない方がいい」
イチロー選手のリーダーシップについて、
第2回WBCで優勝が決まった翌日、以下のように語られています。
「よくチームにはリーダーが必要だとか、安易な発想があるけれど、
今回のチーム(日本代表)に全くそんなものは必要なかった。
それぞれが、向上心を持って、何かを得ようとする気持ちがあれば、
そういった形は全くいらない。むしろ、ない方がいい」
プロ野球で活躍する選手たちによる日本代表チームにおいて、
誰か一人がチームをまとめるのではなく、一人ひとりが気持ちを持って、
同じ目標に進めば「リーダーはいらない」と語られています。
これはつまり、一人ひとりがリーダーシップをもって取り組む、
ということに他なりません。
また、イチロー選手は、新人にどのようなアドバイスをするのか、
という質問に対して、以下のように答えています。
「聞かれたことに対して何か答えることはあっても、
僕から何か言うことはないですね」
これも「それぞれが、向上心を持って、何かを得ようする」という
プロの姿勢が理念としてあるからこそです。
他の選手のことも細かく観察しているからこそ、的確なアドバイスが与えられる
史上最高のバッターであるイチロー選手に教えを請う選手は多くいます。
かつてシアトル・マリナーズに在籍していた城島健司捕手も、
打撃に困った時に、イチロー選手に助言を求めた所、
ズバッと的を射たアドバイスをもらったそうです。
「イチローさんは、本当にこと細かく分かってみてます。
イチローさんは自分からは『ジョー、こうなってるよ』とは
絶対いわないんですよ。でも求めれば『こうなってるよ』って
冷静に判断して、指摘してくれる」
イチロー選手は自分自身の技術向上だけでなく、
他の選手のことも細かく観察し、アドバイスを求められたら、
的確に指摘されます。
リーダーとして的確にアドバイスするためには、
単に自分の経験やノウハウを与えるのではなく、
相手のことをしっかり観察して、その人にあったアドバイスを
与える必要があります。
NLPでは「キャリブレーション」という、
相手の言葉以外の情報である姿勢や動き、表情、声のトーンなどを観察し、
相手がどのような心理状態にあるか見分けるものがあります。
上手くいっている状態と、上手くいっていない状態を比較して、
その人の行動や表情、話すときの声のトーンなどを観察し、
どこが上手くいっていないかを見極めます。
そして、助言を求められた時に、
上手くいっている時の状態と、上手くいっていない状態の差を指摘して、
相手に気づかせてあげることができ、良い状態に導くことができます。
リーダーとして的確な指示を与えるためには、
自分自身の能力向上だけでなく、他のメンバーのことも細かく観察し、
相手が困っている時にきちんとアドバイスができるようにしておくことも重要です。
経済人から学ぶリーダーシップ
